キャンプ場を始めた経緯について教えてください
こどものころから家族でキャンプに行くことが多く、高校生のころにはキャンプリーダーになり、その時のグループに、お母さん以外とは全然口をきかないような「緘黙児」(かんもくじ)と言われる子がいました。その子がキャンプファイヤーの時に歌って踊って、その後に自分とも話してくれるようになったんですよね。もともとキャンプ好きだったし、「こどもたちと野外で活動することで、そういうこどもを一人でも救えるかな」「もしかしたらこういう仕事が自分に向いているかも、自分の役割かな」と思えた、大きなきっかけになりました。でもキャンプ場で食べていけるような時代ではなかったので、勉強嫌いでしたが、教員になりたくて大学に入りました。教員になれば夏休みも長いので、プライベートのキャンプ場を作って、そこにこどもたちを連れて行って、野外学校みたいなことをやるのが夢でした。
大学では幼稚園教諭と小学校教諭の資格が取得できたので、まずは幼稚園の体育の専任教諭として働きました。教員やりながらこどもキャンプのボランティアリーダーもしていて、そこの人が山村留学をやっていました。他の地域でも要望があり人を探しているいうことで声をかけていただいて、じゃあ自分がやろうということで場所探しを始めました。
今の場所にキャンプ場を作ろうと思った決め手はなにかありましたか?
所沢で幼稚園の教諭をしていて、実家は名古屋だったので、その間の中央道沿いや、スキーによく行った群馬県の水上のあたりの、東京から便のいい場所で探していました。今のキャンプ場の土地はもともと人が自然と共存しながら暮らしていた時代のまま放置されて原生林化していました。
土地の値段や自然環境も比較しながら、最終的には「人」が決め手でした。その地元で買い物をした時の人の雰囲気を見たりして、今の場所は、役場に「こんな計画があるんだけど」と相談したときに対応してくれた人が真剣に話を聞いてくれて、関係ない課の人がお昼に誘ってくれたりと人の温かさを感じました。
ご自身のキャンプ場の魅力を教えてください
できるだけ人工的じゃない自然を活かしたキャンプ場なので、お客さんはそれに魅力を感じてくれているのかなと思います。大きい道路がないので車の往来もないし、大きい川がないので溺れることもないし、森もとても深く簡単には入っていけないので迷子になるような心配もなく、親もそれが分かると安心して行っておいでと言えてリラックスできるんだろうなと思います。夜は光もなくて車の音もなくて、自然の音だけが聞こえてくる・・・オートキャンプ場でこんなに静かなところってないんじゃないかなと思います。本当に真っ暗になるので、それを怖いと言う人もいると思いますが、その分星空は他では見られないほど凄いです。そういった非日常を楽しいと思ってくれた人だけがリピーターで来てくれているんじゃないかな。
キャンプ場を運営していて、どんなときにやりがいを感じますか
お客さんは家族連れが8割です。始めて24年もたつと、昔家族連れで来ていたこどもが、自分のこどもを連れてきてくれるようになったのが一番嬉しいです。「こどもが生まれたら絶対ここに連れてこようと思っていて」っていうことが年に何回かあります。あとは「色々なキャンプ場に行ったけど、やっぱりここがいい!」っていう声をいただくとたまらなくこの仕事のやりがいを感じます。
こどもキャンプに関わってきて、オートキャンプという形を選んだ理由はありますか
自分はずっと「こどもキャンプ」一筋でしたが、あらかじめ決まっているプログラムを次、また次とこなしているのが嫌で、それに対してずっと疑問がありました。「もっと川で遊んでいたい」とか「もっとこれ作っていたい」といった気持ちがあっても「はい時間だよー」って終わらせなきゃいけなくて。そういったことで生業を立たせている人は周りにいっぱいいますが、できればやりたくなかったですね。そんな中で「オートキャンプ」という形が世の中に出てきて、「自由」で「親子で楽しめる」ってすごい!と思って、このスタイルを選びました。
キャンプの一番の魅力ってなんでしょうか?
こどもの頃は自然の中で遊べることが単純に楽しかったですが、大人になってからは、自然を感じながら、日が落ちてきたなぁとか、お腹すいたなぁとか、日が昇ってきたなぁとか、あまり時計を見ないで、自然に合わせたリズムが出来てくる、時間に囚われないことが一番の魅力だと思っています。
ボラバイターの仕事について教えてください
キャンプ場施設の清掃や自然体験プログラムの補助などを主にお願いしています。連休にはキャンプファイヤーやナイトハイクなどのプログラムもあり、そういったイベントを手伝ってもらうこともあります。こどもと一緒に遊ぶのが好きな人には時間の許す限り遊んでもらっています。
夏限定のこどもキャンプのスタッフ募集は、具体的に何をするんでしょうか?
ボラバイターはこどもたちの班に入ってもらって、こどもたちと一緒にご飯をつくって、遊んで、寝てという感じです。こどもは小学校1年生から6年生までで、多くて20人くらいなので、一班10人くらいでしょうか。スタッフが多ければ一班に2人リーダーがつくこともあります。おおまかなプログラムはありますが、基本的に自分たちで考えるように柔軟に時間を組んだり、食材を渡して自分たちでメニューを決めて作ってもらったりしています。
2002年から15年以上ボラバイターを受け入れての思い出はありますか?
1994年の4月にオープンしてからは地元の高校生や知り合いの人に頼んで手伝ってもらっていました。それがたまたま誰も頼める人がいない年があって、東京の会社に頼むなんてイメージがつかなかったんですが、その時に始めました。最初に来てくれた人がわざわざ仙台から来てくれて、地元の高校生だと、お願いした事だけをやってもらう感じでしたが、ボラバイターは仕事がやりたくて来てくれたので、そもそもの姿勢が違っていて、仕事に興味を持って「やることはないですか?」と聞いてきたり、探したりしてくれて感心したのを覚えています。
リピーターのお客さんは、うちのスタッフは皆ボラバイターという認識でいますし、家族連れで来ているこどもが、ボラバイターと仲良くなって憧れて「僕も高校生になったらボラバイターで来たい!」って言うこともあります。自分がキャンプのリーダーに憧れてキャンプのリーダーになったみたいにこどもも育ってくれているのは嬉しいですし、自分が理想としていたキャンプ場に徐々になってきているのかなと思っています。
いつもどんな人が来てくれるかワクワクして待っています。人を育てることが自分の役割だと思っているので、来てくれるとうちも助かるし、同時にボラバイトに来てくれる人が、その人が自分自身の特性を感じ見つけ出してくれたらくれたら嬉しいと思っています。
取材日:2017/6/9
記事:AKKY
写真:大越 香絵