ご自身が農業を始められた頃について教えてください
農業を始めたのは20歳くらいでしたが、自分から望んで始めたわけではありませんでした。当時、農家の長男は後を継ぐのが普通で、必然的なものでしたが、最初はいやでした。なぜかというと、40何年前の農業って言うのは社会的にあんまり認められてなくて、農家自身も誇りを持っていなかったんじゃないかな。
自分の職業に対して自信を持ちたいし、誇りを持ちたいし、人のためにもなりたいっていう気持ちがすごく強かったけど、何をすればいいのかわからないまま年齢を重ねて、40歳までに農業を好きになるための何かが見つからなかったら、このまま一生終わっちゃうと勝手に思っていました。
「農業を好きになるためのなにか」はいつ見つかったんでしょうか
ちょうど40歳の時に見つけました。その当時、自分は農薬も除草剤もいっぱい使っていたけど、それを使わない、有機農業をしている人に出会ったんです。当時有機農業がもてはやされていて、よく分からなかったけど、とりあえず真似をしました。
最初は単純に農薬を使わないで栽培をしていました。使わないだけなら誰でも出来ますよね。ただ、農薬を使わない、除草剤を使わない、化学肥料を使わないで、ちゃんとした商品を作るのは難しいと思います。今見た目も中身もちゃんとした野菜ができるようになったのは、土作りをしっかりやってきたからです。今の野菜は慣行栽培に負けない野菜になっていると思います。
作っているお野菜について教えてください
にんじんが一番多く、得意です。他には大根、キャベツなど。さつまいもの無農薬栽培の勉強もしましたが、これはなかなか難しい。ピーマンも無農薬で7年前から作っています。農薬を使わずに、虫にも食われずに育てられるのには理由が二つあると思っていて、一つは周りにピーマンを育てているところがなくて、天敵の黄色アザミウマという虫が繁殖しないこと。もう一つは、コンパニオンプランツという方法を取り入れて、ピーマンとバジルを組み合わせて育てていること。農薬を使っても虫に食われてしまう農家さんが見学しに来て、びっくりしてたね。
どんなボラバイターと働きたいですか
好奇心のある人は魅力的だよね。集中力があるといいけど、一生懸命やってくれればいいんじゃないかな。3ヶ月という期間は仕事を覚えて終わりだから、そのデメリットは感じてます。初心者だったらね、最初から出来るわけないんだよね。Aという仕事は下手なんだけど、Bという仕事をやらせたら上手い、とかね。まじめにやっている限り、その人が得意な作業って絶対あるから、それを探すようにしています。
農業は楽な仕事ではないけど、楽しくやった方が仕事は楽だから。作業の途中で、「さて、次はなにをしようかな」って立ち止まる時間がない方がいいと思ってて。「これ終わったら次これやって」と指示を出して流れがあるようにしています。あとは楽しい仕事って達成感があるかどうかだから、草取りでも「私の前に道はない、私の後ろに道がある」ってね。楽しさを演出するようには心がけています。
仕事の息抜きはなにかありますか
ドライブが好きです。ふらーっと色んな所に行って。城は好きじゃないんだけど、城跡が好きで。石垣とか空堀とかを見て、こんな風に建っていたのかなと想像したりしています。
これからの目標を教えてください
これからは野菜のクオリティをどんどん上げていきたいと思っています。1年目と10年目の糠床で違うものが出来るように、畑も同じで10年より20年、20年より30年とどんどん熟成していくから、それがすごく楽しみなんだけど、黙ってても自分よりいい野菜を作れる跡継ぎの息子がうらやましいなと思います。それでもその基礎を作った自分を褒めてあげたいですね。
人生の中で、徳をいっぱい作って、徳な人間になりたいという思いがあって、人に親切にしたり、人を大事にしようと思っています。野菜を育ててきたけど、野菜に育てられたことがすごくあると思っているから、有機農業が今の社会に合っていて、みんなに受け入れてもらっていて、自分のやってきたことが結果的に間違っていなかったのは、すべて徳のなせるわざかなと思います。
【ボラバイターさんへのメッセージ動画です】
本記事は、3/25、26に東京新宿中央公園にて開催された「TOKYO outside Festival」のボラバイトマルシェ会場にて伺ったお話を元に作成しました。 |
取材日:2017年3月26日
記事:AKKY
写真:大越 香絵