ファーム-pndk【奈良県・五條市、果樹】

年が明けお正月ムードもひと段落した1月下旬、奈良県の南西部に位置する五條市のファーム-pndkさんを訪問しました。柿の名産地としても知られる奈良県、こちらの農園でも柿をはじめ梅や旬の美味しさを活かした商品づくり、さらには農家レストランなどを精力的に運営されています。

今回は、ボラバイトの窓口であり経理等を担われている中田さんと、農園の現場責任者である野丸(のまる)さんにお話を伺いました。よろしくお願いします。

最初に、農園の成立ちと募集を始めたきっかけについて教えてください

中田 1960代に経済成長期を迎え市場の要求に応えるために、奥大和の集落でも農薬や化学肥料の使用がエスカレートし農家の健康被害や生態系の破壊が問題になりました。農業の在り方に危機感を持っていた紀伊半島の農家さん達と一緒に、農園創業者の王隠堂(おういんどう)氏が1970年代後半から有機農業を始めたことが始まりです。


事務所には表彰状がずらり

ボラバイト募集のきっかけは、梅林で有名な和歌山のみなべ市と新宮市の県境に三重県御浜町(みはまちょう)という所で農業用の宅地開発ができると聞いて、ほなここで梅を作ってみよかということになりました。11町ほどあるんかな。
※約33,000坪(東京ドーム約2.3個分)


農園からの風景

― そんなに広いんですね…!

中田 うん、結構広さがあるんですよ。それで当時、収穫担当者だった者がボラバイトを知って募集を始めたんです。それがもう13年ほど前になるかな。

― なるほど。では現在の五條市でボラバイト募集を始めた経緯は?

中田 会社がある五條市から御浜町まで車で2時間半ぐらいかかるので移動と管理が難しいと。あと地元新聞に求人の折込みチラシを出したら応募がどっさり来たので御浜の農園は地元雇用に切り替わりました。
でも、ほんならここ五條の畑で(ボラバイトを)してもらおうよと。梅の作業に加えて柿も収穫や芽摘みの時季に来てもらうことになりました。


ボラバイト担当の中田さん。銀行員時代の経験を活かし50代で農園に出向、そこから20年近く勤続されていて農園になくてはならない頼れる存在です。

― ここからは作業担当の野丸さんにもお話を伺います。

こちらの農園に入社されたきっかけを教えてください

野丸 僕は五條で生まれ育って高校卒業後は大阪のパソコン関係の専門学校へ行ってたんです。ただ、パソコンをやっていてもなんか自分には合わんなぁと。
どうせやったら地元で働ける仕事がしたいと思っていろいろと調べてたら五條は柿が有名やと。住んでいて全然知らんかったんですけど。しかも生産者がだいぶ減ってると聞いて、じゃあもう僕がなろうと(笑)

― す、すごい・・・


とても気さくな野丸さん。作業の説明も分かりやすい言葉で丁寧に教えてくださるので農作業がはじめての方も安心です。

野丸
 思いつきで自分がなろうと思って求人を見て3年ほど前にここに来さしてもらいました。そこからはもうてんやわんやなんですけど慣れつつ、他の農家さんの作業を見つつ勉強中です。

中田 面接に来たのはちょうど梅の時季やったよな? 体格もしっかりしてたしすぐ畑に連れてったらええわと思って梅畑に連れて行きました。

野丸 もう面接というか「明日からここでやるで」みたいな感じで(笑)
それで来てすぐ草刈り始めるみたいな感じでしたね。

柿の作業内容について教えてください

野丸 柿には、渋柿(刀根/とね、平核無/ひらたねなし)と、甘柿(富有/ふゆう)があって、どちらも柿の色づきを見ながら収穫しますが、渋柿は色づいても渋み成分のタンニンが残っているので脱渋処理が必要です。一方で甘柿は色づくと渋みは抜けているので、作業は色づきを見て「今日はこのエリア」「ここはまだちょっと早い」という風に判断します。基本は毎日作業があるんですけど色つきが悪いと休みということもあります。収穫時期は9月下旬~10月下旬までが渋柿、10月下旬~11月下旬が甘柿です。

それから皆さんには脚立を使って作業していただくんですけど、よくある脚立とは違って三脚になっているんです。僕らの土地は斜面も活用して植えているので普通の脚立では柿が採れません。ここに来て初めて三脚を使う方も多いので最初は安全のために付きっきりで乗り方を教えます。

― たしかに斜面で脚立はちょっとこわいイメージがあります。

野丸 そう、でも面白いもんで皆さん最終日にはパパパパッと登るんで、もうちょっと落ち着いて登ってくれ…!という感じで逆に心配になりますね(笑)


三脚の使い方を丁寧にレクチャーして下さる野丸さん


斜面では通常の脚立よりもしっかりとした安定感が感じられます

― ちなみにどんな方がこの作業に向いてるとかはありますか?

野丸 収穫に関しては、う~ん、真面目なことはもちろんですが屋外で動くのが好きなこと、あとは高いところが平気とか危なっかしくないことですかね。やはり柿は傷が付きやすいので丁寧に作業できる人のほうが良いのかなと思います。

― 今日もボラバイターさんが1名いらっしゃいますが、今はどんな作業をされているのですか?

中田 年末頃まで加工場に集まった柿の皮を剥く作業をしていて、今はそれを干し柿に加工するために乾燥機から出した柿を手もみして表面に白い粉が出るようにする作業です。例年ボラバイト募集は11月末頃で終わってるんですが、2月末までこの加工作業があるので今年は募集時季を延ばしたんです。地元パートさんがトータル17人ぐらい、交代で休みを取るので毎日8~10人で作業しています。


加工場ではこの日も干し柿の作業をされていました

中田 加工は毎年やって慣れた人が来てくれているので、その間ボラバイターさんには畑で梅の木をせん定した時に地面いっぱいに落ちた枝を集めてもらう仕事をしてもらっています。それをきれいに片付けないと草刈りするにも枝が引っかかって何も出来なくなるので大事な作業です。


荷台いっぱいに集めた枝


畑のすぐ下に加工場があります

ボラバイターさんとお仕事する際に
大事にしていること、心がけていることがあれば教えてください

野丸 絶対に怪我をさせないことですね、もうそれだけです。脚立に乗って作業してると柿とか落としてまう時もあるんですけど、それはその分多く採ってくれたらいいんでとにかく怪我だけはないように心がけています。せっかくここまで来ていただいて怪我して帰りましたなんかには絶対させたくないです。

― あの時落ちたなと嫌な思い出にはしたくないですよね

野丸 だからたまに「あいつなんかずっと見てるな…」って思われてるかもしれないですけどそれは大丈夫かなという心配の目なんです。

最後に、これまでボラバイトを受入れてきた感想と、
ボラバイターさんに向けてのメッセージをお願いします!

中田 短く1週間ほどで帰ってしまう子もいる中で、やっぱり長い期間来てくれる子がいたら嬉しいです。

野丸 僕はまだ一緒に作業して2年ほどですが、若い世代の子が来てくれるとやっぱり嬉しいです。周りのスタッフさんもお菓子をあげたりすごく可愛がってくれています。仕事もボラバイターさんは即戦力になると皆分かっているので、僕が気づいた頃にはスタッフさんが立派に育て上げてくれていて、皆さんたくましく成長されています。

― 周りの気分も上がるし潤滑油的な

中田 うんうん、そうやね。それから去年、ボラバイトに来てくれた子に(創業者の)王隠堂(おういんどう)の名前は1338年に天皇から戴いたものという話をしたら「すごく由緒のある名前ですね!もっと広めたらいいじゃないですか」と言うてくれたんで、農園名を「王隠堂農園」に変えたんです。そしたらびっくりするほど沢山のボラバイターさんが来てくれました。

そのこともあって昨年ボラバイターさんのお陰で「ボラバイトAWARD2022」にてみごと金賞をいただきました。この受賞を機に一層頑張っていきたいと思います。


貴重なお話、ありがとうございました!

【 ボラバイター体験レポートのごあんない】
インタビュー当時、こちらでお仕事をしていたボラバイターさんにも
お仕事や現地の生活についてお話を聞かせていただきました。
こちら からご覧いただけます!

取材日:2023/1
記事:巳波 智佳