-ペンションは1999年から始めたと伺いました。始められたきっかけについて教えてください。
お父さん お母さんとは職場結婚をして、当時は埼玉に住んで池袋の会社に勤めていました。通勤ラッシュが体にこたえたというのと、40代後半になってお給料も増えてくるんだけど責任も増えてきて、体調を崩したんですよね。それで仕事をやめて、ペンションを始めました。
お母さん 体が健康ならなんでもいいかなと思ってついていきました。
-ペンション以外になにかやってみたいお仕事の候補はありましたか?
お父さん 仕事を辞めたときに、半分くらい仕事をして、半分くらい自由時間がある職業ってなんだろうって考えて。アパート経営とかも候補にありましたが、金勘定だけでは人生面白くないと思ってペンション経営を選びました。
-始めた頃の思い出はなにかありますか?
お父さん ゼロホンの世界っていうのかな、雪が降ると周りの音を吸収して本当に静かなんですよ。冷蔵庫やテレビからジーンっていう音が聞こえてきて。東京では絶対に聞こえない音だから、電気製品にも音があるんだとびっくりしました。
お母さん それまでは主婦と会社員で離れている時間も多かったけど、ずっと一緒にいるようになって、一緒に働くストレスはありましたね。意見が違う事もいっぱいありました。
お父さん ロビーにバルカンストーブという炎が揺れるストーブがあるんですが、70代の夫婦が何時間でもその火を見ていたのをよく覚えています。ゆっくりとした時間を過ごすためにここを使ってくれているんだな、やっててよかったなって思いましたね。今でもお客さんから食事が美味しかったとか、泊まってよかったって言って頂けるのは嬉しいです。
-ペンションを始めるにあたって清里を選んだのはどうしてですか?
お父さん 僕自身は海が好きなんです。相談していた方から「海が好きなら山に行きなさい」って言われたんだよね。その頃はスキーブームだったから、冬はペンションの仕事をして夏は海に遊びに行けるって意味で言われたんだと思います。でも結局清里は避暑地で夏も皆さん来られるから海には行けないんだけどね(笑)。
お母さん 千葉の方にも行ってみて探したけれどいいところがなくて、たまたま今のこの場所のペンションをやっている人がやめちゃうからどう?ってお話をもらって、清里に決めました。
-旅行サイトの口コミやボラバイターの体験談で「お父さんのごはんが美味しい」という声が多く見られました。料理はどこかで勉強されたんですか?
お父さん 専門的にどこかで勉強したということはありません。時間をかけて作れば美味しくなりますよ。冷たいものは冷たく、温かいものは温かく出すのが原則ですし、食材も地産地消で、なるべく添加物のないもの使うようにしています。
お母さん サラリーマン時代もお父さんが休みの日は料理を作ってくれていました。子どもたちも楽しみにしていて、うちの子ども達の思い出の味は「おふくろの味」じゃなくて「おやじの味」なんです。お父さんが作ってくれた手打ちうどんとか、お好み焼きとか。私は料理は全然ダメなんだけど、お父さんは味付けも上手いし、作るのも早いですよ。
お父さん 以前ボラバイターさんに、「一ヶ月毎晩、夕食が違うメニューでびっくりした」って言われたこともありました。昼間は同じ事も多いけど、夜は毎日頑張って変えていましたね。ボラバイターさんがいるから買い物に行けて、だから出来ることだと思います。
お母さん 他のペンションでは、夏は特に忙しいから、お客さんにハンバーグを出したらスタッフもハンバーグ、ステーキだったらスタッフもステーキなんて話も聞きますが、お父さんはちゃんと毎日作っているからすごいなと思っています。
-ボラバイターさんの仕事について教えてください
お父さん ボラバイターさんには、お部屋の掃除と料理の盛りつけ、配膳などをお願いしています。2人いたらキッチンでは僕が教えながら料理の盛りつけをして、フロントだったらお母さんに教わりながら料理を運んでもらっています。
お母さん 土日以外でも、周辺のペンションと合同で修学旅行生を受け入れる時もあります。1クラスを男子と女子で分けると20人弱くらいで、大体ペンションの大きさに合うので。その時は、最終日に合同でバーベキューをするので、そのお手伝いもお願いしています。
-呼び方は「お父さん」と「お母さん」でいいんですか?
お母さん 「みなさんのお父さんやお母さんよりは年だけど、ここにいる間はあなたのお父さんとお母さんのつもりでいるから、そう呼んで」って伝えています。皆はじめのうちは慣れないけど、すぐ慣れて呼んでくれるようになりますね。
お父さん ボラバイターさんたちは自分の娘や息子が来ているように思っていますし、お客さんから「実の娘さん?」って聞かれることもありますね。
お母さん 「似てる」って言われたこともあったけど、そんなはずはない(笑)ってね。帰ってからメールをくれるときも、お父さんお母さんと書いてきてくれるのは嬉しいですね。
-2002年頃から、300人弱のボラバイターさんを受け入れて、一番印象に残っている方はいますか?
お父さん やっぱり、Mちゃんかな。最初は一ヶ月の予定で来たんだけど、延長して春から秋くらいまで働いてくれましたね。
お母さん 仕事を10年間頑張ってきたけど、仕事に疲れて、彼氏にふられたから気分転換がしたくて、ということでした。
お父さん 当時は厨房担当で、一緒に仕事をしながら色々話すんですが、「お父さん、いい人がいたら紹介して」って言われて。初めは冗談だと思ってたんだけど、何回も言うから本気だなと思って、紹介した人と結婚しました。
-昔と変わったなと思うことはありますか?
お父さん 昔は大学生のボラバイターが多かったから、夏は地元の高校生アルバイトの宿題をやってあげていたイメージがあります。
お母さん 最近は社会人経験を経ている人も増え、しっかりと責任感を持ってやってくれています。私たちも年をとってきたので、力をかしてくれるボラバイターさんに期待しています。
-ボラバイターさんたちは休日はどのように過ごしていますか?
お母さん 萌木の村に行ったり、皆さん最初はソフトクリームを食べに行きますね。
お父さん 12時くらいには仕事が終わるようにしていて、お昼を食べると13時くらいから空き時間になります。
お母さん ソフトクリームで有名な清泉寮は歩いたら1時間くらいで、ピクニックバスというのに乗れば、清里をぐるっと回ることもできます。ハイキングに行くときはかんかん照りでも傘を持っていってって言うんだけど、持って行かないで雨に降られてね(笑)
お父さん 何回も迎えに行きましたね。夏は夕立が多いから。それもだいたい忙しい時間に電話がかかってくるんですよ。17時前とか、夕食をつくらなきゃいけなくて忙しいのに。ボラバイターさんっていえば迎えに行くってイメージがありますね。
-カントリーイン-cciさんといえば、募集情報の1枚目のお写真にお二人が写っているイメージがあります。
お父さん まずボラバイターさんのご両親に心配かけちゃいけないと思って、募集でもこういう人が経営しているんだと分かるように二人の写真をあげるようにしました。
お母さん 全然知らない土地に泊まり込みで来てくれるなんて、すごい勇気があるなと思っています。近くのコンビニに飲み物などを買いに行くときは、私たちに声をかけてから、夜は一人では行かないでねと最初に伝えています。
お父さん 預かる側の責任はすごく大切に考えているので。預かったら今度は無事に返す!
お母さん お父さんはいつも「清里に働きに行ってげっそり痩せて帰ったらご両親に申し訳ない」といって一生懸命美味しいものを作って食べさせようとしています(笑)。ボラバイターさんは、よく働いて、よく食べて、よく笑って元気になってくれますね。
お父さん 色んな人に来てもらうんだから、しっかり情報公開すべきですよね。ボラバイターさんからの情報だけで採用するだけではなくて、プラスもマイナスもこちらから情報を発信するべきだと思っています。
【ボラバイターさんへのメッセージ動画です】
【編集後記】
ペンションの目の前に広がる芝生の緑が本当にキレイで、標高の高さと緑に囲まれた環境で空気もおいしく、そしてお母さんお父さんのお人柄もあわせて、昔働いていたボラバイターさんが遊びに来るのも納得!という感じでした。ちょうど梅雨時期で雨が降っていましたが、晴れた日には清々しい空気でボラバイターさんを迎えてくれると思います。
取材日:2017/7/4
記事:AKKY
写真:大越 香絵