農家-yomc【長野県・飯山市、野菜】

農園の概要とご自身について教えてください

農園では、きのこ(ぶなしめじ)を通年と、春先から夏にかけて枝豆栽培をしています。ボラバイターさんは枝豆栽培の時期に募集しています。枝豆の栽培規模は14.5ヘクタールで、関東・名古屋・北陸三県のスーパーに直販しています。ひいじいちゃんの代から、ずっと飯山で農業を営んできて、父の代で会社を興し自分が引き継いでいます。

ぼくは高卒で建設業の仕事に就いて、鉄骨加工や現場での鳶の仕事をしていました。22歳の時に結婚をして、それを機に親元就農しました。そのころはきのこ生産しかしていなかったので、「きのこ屋に就職した」という意識がありました。なので就農してから数年後に、親父が枝豆栽培を始めたときも「畑なんかやらない」と一切手を出しませんでした。それでも最近は枝豆のほうが楽しいと思うことがあって、変わってきたなと感じています。

枝豆栽培と、ボラバイターさんの仕事内容について教えてください

枝豆はほぼ人力で、機械化がなかなか進まない品目です。いろいろな情報を集めながら、この地域にない技術でも取り入れてより良いものを作ろうと、試行錯誤を繰り返すことがとても楽しいです。

たとえばお米は機械作業が多く、一人で17ヘクタールをカバーできる計算になっていますが、枝豆はそうもいきません。メインスタッフ6名と夏季スタッフ4名に加えて、ボラバイターさんにも手伝ってもらっています。収穫補助、枝豆のごみ取り・洗浄、選別、荷造りの仕事をいくつかのパートに分かれてお願いしています。

最初にボラバイトで募集しようと思ったきっかけは何ですか?

親父が枝豆栽培を始めて陣頭指揮を執っていたころは、近所のお年寄りの方が働きに来ていました。休憩時間の話題は、だいたい病院か葬式の話で(笑)。
それから枝豆が大暴落して取引先がゼロになった年があって、親父が辞めるなら、取引先の開拓も含めて自分で一からやってみたいと思い引き継ぎました。そのタイミングで、エネルギッシュな若い子たちと働きたいと思って、募集を始めました。

2013年から毎年20人以上のボラバイターさんを受け入れて、
どのように感じていますか。

友達作りや、就活のネタ作りなど、本当に様々な目的を持って働きに来てくれます。共通していることは「非日常を求めて来る」ということと、それぞれその時点でなにか迷っていても「一歩踏み出す勇気を持っている」ということです。また遠くからやる気を持って来てくれるので、楽しそうに仕事をしている姿に自分も刺激を受けながら仕事が出来ています。
夏の収穫時期には地元の70代、80代の方も一緒に働きます。ボラバイターさんと打ち解けて憎まれ口を叩き合っていたり、ボラバイターさんが80歳の人に体力で負けて本気で悔しがっていたりして、そうした化学反応を見るのがとても面白いです。

スタッフの武さん

お仕事をする上でのポリシーはなにかありますか

昔から「笑顔」を一番大切にしています。一生懸命に取り組むときに、威圧されて怯えながらやるよりも、チームで仲良くやったほうがいいものが出来ますよね。やっぱり良いものは笑顔からしか生まれないと信じています。
うちの枝豆を食べたお客さんが、二度見するほど美味しくて、例えばケンカしていても仲直りしてしまうような、笑顔から生まれた枝豆が笑顔を作るようなことが理想です。

ボラバイターさんを受け入れるにあたって気を付けていることはありますか

まずとにかく安全第一です。動きを見て怪我をしそうだったら注意して、皆にも共有します。仕事をする中で壁にぶつかっても、「一緒に頑張るから、一緒に越えていこう」というスタンスで、フォローしあっています。
あとは、その子の能力が何で発揮できるのか、来てから半日で見抜くように頭をフル回転させています。農業の素人と働いて仕事が成り立つのかと言う人がいますが、それはマネジメントするオーナーの腕次第だと思っています。適材適所に配置をして、どう説明して、どう働いてもらうかで、成果が変わってきますね。

飯山について教えてください

日本一長い千曲川があり、多くの山々に囲まれた自然豊かな場所です。ボラバイターさんがいる時期には、カヤックでのダウンリバーや、温泉ツアー、渓流釣りなどのアクティビティも豊富です。ここ飯山でしか出来ないこと、皆がお金を出してでもやりたいことを無料でやらせてあげようと、休日は本気で遊んでいます。

これからの目標を教えてください

取引先も、お客さんもスタッフも、うちの会社に関わる人が幸せになれる会社でありたいと思って、そうなるために、どうしたらいいか常に考えています。今年はまず、昨年2019年の台風19号の被害で畑がまだ荒れている状況なので、どう乗り越えて、作付けまで持ち込むか、皆で壁を越えていきたいです。

【ボラバイターさんへのメッセージ動画です】

-スタッフの武さんにお話を伺いました

数年前のボラバイトでの勤務を経て、
2019年4月より正社員として働いてみてどうですか?

教えてもらって働く立場から、人に指示を出すようなこともあって、「責任」をより感じた一年でした。枝豆が植え付けからだんだん成長していく様子を見られたので、収穫時期の感動はひとしおで、シーズンの最後は寂しい!と思ったほどです。

ボラバイトの受け入れ側になってみて、どうですか?

自分がボラバイターとして働いていたからこそ、なにが分からないかも分からなくて不安に思う気持ちがよく分かります。口で説明するだけじゃなくて、実際にやって見せたり、一緒にやってみたりして、忙しい時ほど丁寧にコミュニケーションを取るようにしました。
それでも、自分の事だけで精一杯になるときが多かったので、これからはもっと視野を広く、一緒に働く人に思いやりを持って働いていきたいですね。

【編集後記】
ボラバイトAWARD2019の取材時にお話を伺ったので、少し働き方についてのお話が多くなりました。とにかく働いているスタッフのことを第一に考え、農業初心者のボラバイターさんもしっかりと働けるような心遣いが他のスタッフにも伝わって、働きやすい雰囲気が出来上がっていると感じました。夏の清々しい飯山の空気を、思いっきり楽しみに行ってみてください。

取材日:2020年2月6日
記事:AKKY
写真:大越 香絵