農園-kkju【茨城県・常総市、野菜】

ボラバイターさんからの満足度が高かったボラバイト先を表彰する企画「ボラバイトAWARD」において、2023年に金賞を受賞した茨城県常総市にある農園-kkjuさんを表彰訪問させていただきました。

ボラバイト募集を始めてからわずか1年で30人を超えるボラバイターさんが伺い、
その高い人気がボラバイトAWARDでも評価されました。

人が集まる農園の秘訣を、元ボラバイターでもある園主の菊地さんにお話をうかがいました。

最初に、農園で生産されている作物や規模について教えてください

メインの作物はレタスとネギ類で年間合計30ヘクタールぐらい作付けをするんですけど実質の畑の広さは10ヘクタールほどしかありません。サイクルさせるので(10ヘクタール×3サイクル)そんなに農地は必要なくて、春菊のように何回も伸びるものを収穫するので規模を拡大させることもないんです。

春菊は卸先の要望に合わせて生産量を決め栽培しているのだとか)

代々続く農業家系とお聞きしましたが、
ご自身が農業を志すきっかけはどのような経緯だったのでしょうか?

元々小学生の頃から農業がやりたくて、昔から将来は左官職人か農業をやるって決めていて。私はやっぱり「土」が好きで外遊びや土壁が好きだったり、とにかく土に関する仕事をやりたかったんです。

ー 幼い頃から二択にしぼられていたんですね

ただ家の農業は長男が継ぐのが基本で、僕は3人兄弟の次男だったので継ぐことは無いだろうと思ってたんですが、長男が継がないとなったので「やった農業ができる、ラッキー」という感じでした(笑)

農園を継ぐためにいろいろな経験を積まれたそうですが…

最初はボラバイトやWWOOF(ウーフ)に行っていろいろ勉強させてもらいました。ただ、行った中にはすごく厳しい所もあって。その時に正直、自分はこういう風にはなりたくないと思ったんです。

だから受入れをしている今もボラバイターさんが当時の自分と同じように「ここはどんな環境なんだろう…」と不安を抱えながら来ているという気持ちもすごくよくわかります。

ー ボラバイトへ行ったのは20年以上前とうかがいましたが、知ったきっかけは何だったのですか?

当時はそれほどネットも盛んではなかったので、本を読んでて。「ソトコト」とか「パ  ーマカルチャー」とかの雑誌だったと思います。

ボラバイトでは栃木のいちご農家だったり、群馬の片品村の観光農園とかに期間は3ヶ月ずつぐらい、短い期間でいろんな所に行っていました。

当時ウーフでお世話になった農家さんと10年後ぐらいに地元の講演会で一緒になって「昔、ウーフで行ってましたよ」と声をかけたら向こうも覚えててびっくりなんてこともありました。


(これまでの経験を活かしてさまざまな取り組みをされている畑の様子)

ー 農園ではボラバイターさん以外にどんな方が働いているのですか?

今、うちの農園では特定技能実習で来ているインドネシアの子がメインで働いていて、真面目に一生懸命働く姿を見るともっと頑張らなくちゃという気にさせてもらえるんです。それは私たちにとっても好循環で、そこにさらにボラバイターさんが加わることでより活発になってさらにやる気をもらえます。


(作業中の様子。手早くレタスをカットして収穫します)

私の場合はボラバイトで受入れをすることで人生がもっと豊かになると思っています。

たしかに仕事は効率が大事ですけど、やっぱり効率だけだと人生がつまらなくて。中には脱線したり仕事が十分にできない人もいるけれどいろんな人を交えて行かないと。1人ひとり個性や特性が違うのでそれぞれの長所を伸ばすことしかできないですけどね。

20代、30代の頃はずっと休みなく仕事をやってきてそれなりに結果を出して力もついてきたので、余裕が出てきたから受入れをしているということもあるんです。

仕事をする上で大事にしていることを教えてください

常に笑顔でいることが大事だと思います。

特に朝のあいさつは笑顔で。作業で雨が続いたりすると辛いなと思うこともあるんですがそういう苦しい時でも笑顔が大事かな。

それから上手くいく秘訣はちょっとした余裕(遊び)をもつことだと思っています。
例えばさっきの雨が続くような状況でも、あらかじめ納品先と融通が利く関係性を作っておくんです。向こうの立場が上だと雨だろうと絶対に納品しなきゃとなるところを余裕があると「明日は晴れるんで次の日でいいですか?」と話ができるので7~8分目の対応がちょうど良いのかなと思います。なにごとも欲をかきすぎないことが大事ですね。


(取材中も奥さまとの写真撮影の際も、常に笑顔の農園-kkjuがとても印象的でした)

この1年、多くのボラバイターさんを受入れてきた中で印象に残っていることはありますか

これまで来てくれた皆さんは一度社会に出たことがある人が多いという印象で、そこで社会のいろんな厳しさや挫折を経て自分探しをしている人が多いように感じます。ボラバイトの経験がきっかけで次のステップに行けるのであればこの仕組みは素晴らしいものだなと。

ー ありがとうございます、ここでの生活を通して変化が見られた方もいましたか?

いました!特に募集を始めて最初に来てくれた方はすごく変わりました。元々何軒もボラバイトへ行っていてすごく優秀だったんですけど、帰る頃には最初来た時よりさらに生きいきしていて受入れて良かったなと思いましたね。来てもらったからにはやっぱり「また来ます」って言われた方が嬉しいじゃないですか。

ー 本当にいろんな方が来ますからね

そうそう、だからやっぱり面白いなと思って楽しんで受け入れています。私はボラバイトを「出会いの場」だと思っていまして。ボラバイターさん同士の交流にもなればと思うし、同じような考えや目標、共感を持てる人たちと出会いたいなと当時の自分も半分そういう気持ちで行っていたんです。

ー なるほど、考えが似ている人たちが集まりやすいですから、一緒に汗をかきながら働くとそれはすぐ仲間になりますよね


(この日お会いしたボラバイターさん、技能実習生の皆さんでパシャリ!)

この他にも新しく来たボラバイターさんの生活をお世話してくれる方もいましたね。
なんだか管理人さんみたいな(笑)その姿勢が素晴らしいなと、だから大学のインターンとか学校の代わりにボラバイトへ行くっていうことがあってもいいんじゃないかなと。実際に農家のところへ来て寝泊まりしてっていう風に経験することも大事じゃないかな、生きる力というか、教育の一環として今の時代だからこそ必要だなと思います。

ー ぜひこちらの農園をベース拠点に、先生よろしくお願いします(笑)


(スタッフで集まって食事やパーティーができるスペースを完備。滞在する人のこと大切に考えた環境づくりが素敵です)

最後に、今後の目標や取り組みたいことがあれば聞かせてください

今周りでも農家を辞める人がすごく多くて、使っていた古民家を売りたいから買ってくれないかという相談が私のところにも多くて。そういう農家さんとボラバイターさんや農業に興味がある人をなんとか繋げられないかなと考えています。農家って辞めるのは簡単ですけど始めるのはすごく大変で、特に農機具の設備をそろえるとか。

現状、古民家の値段はかなり破格でこの先の5年間だけでもさらに空き家はたくさん増えると思います。実際、近所の人が親しくなったボラバイターさんに家を譲ってもいいという話も出たことがあるので、これから農業を始めたい人にとっては逆にチャンスなんじゃないかと思います。

取材日 2024/4
記事 巳波智佳